心臓移植とは

19.退院後の日常生活

外来通院

移植後3ヵ月までは週に1回、6ヵ月までは、2週間に1回、それ以後は 月に1回くらいです。

退院後の定期検査

 先に述べたような検査を各項に示されたスケジュールに合わせて行います。但し、拒絶反応時または拒絶反応が疑われたとき、感染症の疑われたときには適宜追加して行います。

調子が悪くなった時の連絡先

大阪大学第一外科心研(心臓血管外科研究室)

06-6879-3154

西9階病棟(心臓血管外科病棟) 06-6879-6360

移植医療部

06-6879-5053

    
   心研病棟係の医師に相談できるようにしています。
   夜間(午後5時半以降)および土曜、日曜、祭日は西9階病棟に連絡下さ い。
   以下のような時に連絡して下さい。
    1.気分が悪いとき
    2.体がだるいとき(全身倦怠感)
    3.熱が出たとき、微熱がつづくとき(発熱)         
    4.血圧が高い日が続いたり、血圧が低いとき(高血圧、血圧低下)
    5.脈が乱れたとき(不整脈)
    6.手足や、顔がむくんだとき(浮腫)
    7.体重が急に増えたとき(体重増加)
    8.けがをしたとき
    9.歯を抜かなければならないときには連絡を下さい。

食事と栄養

 1.バランスのよい食餌を摂ること
 2.タンパク質は十分に摂るようにするが、脂肪はできるだけ抑えること
 3.塩分を摂りすぎないことも重要で、インスタント食品や加工食品はさけ、
 4.料理の塩分量については退院までに栄養士と相談すること
 5.刺激の強いものは避け、コーヒー、アルコールは控えめにすること
  などを心がけることが大切です。
  そして暴飲、暴食を避け、食事の時間を規則正しくすることが大切です。

入浴

 手術後、傷が治れば(約1週間)シャワーが可となります。この時期は自分の部屋から出られませんので風呂は入れません。退院前には外出の練習をしますので、病棟の風呂に入れるようになります。退院後はできるだけ毎日入るようにします。

日常生活での注意点

 上に述べたように食事に注意し、薬をきちんと指示通りに服用して貰うこと以外に、最も大切なことは感染の予防です。 具体的には
 A)いつも身のまわりを清潔にすること
  1.お風呂には毎日はいる。お風呂のあとは湯冷めをしないように。
  2.衣類は毎日着替える。
  3.洗髪、爪切り、ひげそり をこまめにする。
  4.部屋の掃除は毎日する。ほこりは禁物
  5.犬、猫、鳥などペットを飼うことは厳禁
  6.公園などで鳩のいるところには近づかない。
 B)口の中、のどを清潔にすること
  1.外にでるときは必ずマスクをする。
  2.外から帰ったら、手洗い、うがいを必ずする。
  3.食後は歯を磨く。
 C)食事
  1.なまものは避ける。
  2.火の通ったもの、調理してすぐのものを食べるようにする。
 D)適度の運動
  1.積極的に(もとの)仕事につく
  2.適当なスポーツを楽しむ
 E)その他    
  1.禁煙
  2.過度のアルコールは厳禁
  3.十分な睡眠と休息をとるなどに気をつけることです。

仕事

 規則正しい生活ができ、清潔な環境にある職場であれば、退院後3~6ヵ月で復帰可能です。しかし、心臓移植を受ける前に心不全のため、寝込んでいる期間が長い人ほど筋肉が衰えていますので、リハビリテーションに時間がかかります。完全復帰には寝込んだ期間と同じくらいかかることが多いようです。

運動(スポーツ)

 移植前の寝込んでいた期間、退院後の体調(合併症の有無など)、環境によってかなり違いますが、仕事の完全復帰後です。心臓の機能は確かに、かなりのスポーツもできるような状態になりますが、日常生活における注意のところで述べたように、疲れを残したり、不規則な生活、暴飲暴食をしないようにしなければなりません。
 尚、心臓移植を受けますと、いただいたドナーの心臓がレシピエントの神経と繋がらなくなり、レシピエントの脳からの信号が心臓に伝わらなくなります(除神経と言います)。従って動いてもすぐに脈が速くならないし、運動をやめてもすぐに脈は遅くなりません。そのため、心臓移植を受けて元気になっても、移植後すぐには急な運動は避けてもらっています。しかし、心臓移植を受けて時間が経つと、心臓の脈を調節するホルモンを分泌する働きが高まり、脈拍の反応が良くなります。また、移植後数年経ってくると、少しずつですが、レシピエントの神経が移植された心臓に繋がってくることが知られています。定期的に脈拍の反応を調べる検査をして、それに応じた運動をしていただくようにしています。
 また、心臓に神経が繋がっていないと、心臓に問題が起こっても痛みを感じることがありません。慢性拒絶反応(移植心冠動脈硬化症)といって、移植後しばらく経って心臓を栄養する冠動脈の内腔が細くなる病気がありますが、これが進行して心臓に行く酸素が減っても胸痛(狭心痛)を感じません。そのため、定期的に心電図、冠動脈造影検査、冠動脈内超音波検査を受けていただく必要があるのです。