3種類の免疫抑制剤、プレドニン、シクロスポリン(ネオラル)、アザチオプリン(イムラン)又はミコフェノール酸モフェティル(セルセプト)を服用します。
これ以外に移植の直後や、拒絶反応が起こったときには、ATG(抗ヒト胸腺細胞グロブリン製剤)を筋注または静注するか、OKT3という薬を点滴で投与します。
プレドニン、シクロスポリン(ネオラル)、とアザチオプリン(イムラン)又はミコフェノール酸モフェティル(セルセプト)の3つの免疫抑制剤は、拒絶反応を起こさず快適に生活するために、毎日服用しなければならない薬です。この3つの薬の服用量は、移植された心臓の状態や、全身状態(例えば感染症にかかっているかどうかなど)によって、しばしば変わります。したがって、担当医の指示がないのに、自分勝手に薬を飲むのをやめたり、薬の量を変えたりすると取り返しのつかないことになりかねません。まちがった量の薬を飲むと、移植された心臓がうまく働かなくなるばかりか、命まで落としてしまうことがあることは先に述べたとおりです。
入院している間は、担当者(病棟主任医師、主治医または看護婦)が変更がある度に(術後早期は毎日)、外来通院中は、担当医が診察の際に、薬の種類、量、服用時間を服薬カードに記入してくれます。
外来に通院するようになってからは、薬を切らさないないよう注意してください。
免疫抑制剤を子供が誤って飲むと大変なことになります。薬は絶対に子供の手の届かないところに置いてください。
われわれの体内で様々な働きをもつ副腎皮質ホルモン(ステロイド)と同様の働きをもつ薬剤で、免疫反応に関係する種々の細胞の機能を抑制して、拒絶反応を予防する薬です。
プレドニンは、術後食事ができるようになったら服薬することになります。はじめは、1日20~40 mgを飲みますが、徐々に減量して、1年後には半分以下の5~10mgになります。
プレドニンには次に述べるような多くの副作用がありますので、移植を受けた患者さんのほとんどが、副作用のどれかを経験します。しかし、その多くは重大な副作用ではありません。プレドニンを飲まずに拒絶反応を抑えることができる場合はいいのですが、普通はできませんので、副作用に注意しながらプレドニンの量を加減します。先にも述べたように、副作用がでたからといって勝手に薬をやめたり、量を変えたりすると大変危険です。
われわれの体内で様々な働きをもつ副腎皮質ホルモン(ステロイド)と同様の働きをもつ薬剤で、免疫反応に関係する種々の細胞の機能を抑制して、拒絶反応を予防する薬です。
プレドニンは、術後食事ができるようになったら服薬することになります。はじめは、1日20~40 mgを飲みますが、徐々に減量して、1年後には半分以下の5~10mgになります。
プレドニンには次に述べるような多くの副作用がありますので、移植を受けた患者さんのほとんどが、副作用のどれかを経験します。しかし、その多くは重大な副作用ではありません。プレドニンを飲まずに拒絶反応を抑えることができる場合はいいのですが、普通はできませんので、副作用に注意しながらプレドニンの量を加減します。先にも述べたように、副作用がでたからといって勝手に薬をやめたり、量を変えたりすると大変危険です。
免疫機能に関係する細胞(主にTリンパ球)の働きを抑制して、拒絶反応を予防する薬です。この薬は非常に強力な免疫抑制剤で、この薬が開発されたことによって、拒絶反応による死亡例が非常に減り、臓器移植が世界中で行われるようになりました。
手術後食事ができるようになったら服用を開始します。
この薬の副作用には腎機能障害があり、シクロスポリンの血液中の濃度が高いほど起こりやすいといわれています。拒絶反応を抑えるには血中濃度を一定以上に保たなければならないので、定期的に血中濃度を測定し、その濃度に合わせて薬の内服量を調整します。
血中濃度の測定については、次の章を参照してください。
シクロスポリンは以前は脂肪にしか溶けない製剤(サンディミュン)であったので、いろいろと飲み方に工夫が要りましたが、今は普通の薬と同じように飲んで下さい。しかし、血液内の濃度を一定にするため、規則正しく1日2回、午前8時と午後8時に服用します。但し、シクロスポリンの血中濃度測定の検査(一般的に術直後は毎日、外来では診察日毎)がある場合には、朝のシクロスポリンを服用せず、採血を受けた後すぐに予定量を服薬するようにします。
いちばん重要な副作用は腎機能障害です。尿量の減少、手足の浮腫などが現れたり、血液検査で血清中のクレアチニンや尿素窒素が増加したりします。これらの症状に注意するとともに、シクロスポリンの血中濃度測定や腎機能検査を定期的に行って、重篤な腎機能障害を起こさないよう予防することが重要です。
その他の副作用に高血圧、多毛、顔面紅潮、歯肉の腫張、肝機能障害などがあります。
尚、シクロスポリンと同様に免疫機能に関係する細胞(主にTリンパ球)の働きを抑制して、拒絶反応を予防する薬に、タクロリムス(プログラフ)という薬があります。当院では、第一選択の薬ではありませんが、東京女子医大、九州大学が第一選択にされています。当院では、シクロスポリンで拒絶反応がコントロールできなかったり、いろいろな副作用が出たときに用います拒絶反応抑える効果は、シクロスポリンと同等かそれ以上といわれていますが、血液内の濃度が一定になりにくいこと、糖尿病になりやすいことから、シクロスポリンを第一選択しています。
細胞の増殖を抑える作用を持ち、拒絶反応に関係するリンパ球の増殖を抑えて、拒絶反応を予防する薬です。セルセプトの方が作用が強いので、当院ではまずイムランを飲んでいただきます。その効き方が悪かったり、イムランの副作用(肝機能異常)が出たりしたときに、セルセプトに変更します。
イムランは1日1回朝食後に、セルセプトは1日2回朝夕食後に服用します。
これらの薬の副作用に、白血球減少があります。白血球が減りすぎますと、抵抗力が落ちて感染症にかかりやすくなりますので、白血球数を定期的に測定する必要があります。
免疫抑制療法を受けますと、いろいろな感染症にかかり易くなります。
普通どこにでもいて、健康な人には無害な菌やウイルスまで感染の原因となることが多いので、真菌、ウイルス、細菌および原虫による感染症に有効な薬を予防的に服薬する必要があります。
移植直後3日間は、免疫抑制剤を大量に用いることや、手術自体の侵襲も加わって、非常に感染症にかかりやすくなります。この時期には、抗生剤やヒト免疫グロブリン製剤を静脈投与します。4日目から経口の抗生物質を1週間服薬します。
移植後3ヵ月以内は、ウイルス感染症が多いので、ゾビラックスを服薬します(一般的に移植後6カ月~1年で中止します)。
真菌や原虫に対しては、各々マイコスタチン、バクタを生涯服薬します。マイコスタチンは、口の中の洗浄をかねていますので、毎食後、この薬でうがいをしてそのまま呑み込むようにします。感染を予防するためには、定期的なうがいや、外出後のうがいまたは鼻スプレーが大切です。1日2回ずつ交互にアクロマイシン(抗細菌剤)とファンギゾン(抗真菌剤)でうがいをすることも重要です。
尚、移植後の感染症の原因病原体に、サイトメガロウイルス(CMV)というウイルスがあり、このウイルスによる感染症を発症すると、重症になり、ひどい場合には命を落とすことがあります。また、この感染症にかかると、慢性拒絶反応といわれる移植心冠動脈硬化症にかかりやすくなると言われています。従って、この病気にかからなくすることが大切です。当院では、このウイルスに対する種々の検査をして、感染症にかかる前に治療を行っています。そのため、検査でウイルスが確認された場合には、発症する前に、このウイルスに対する抗体が多く含まれているグロブリン製剤や、このウイルスの増殖を抑制するガンシクロビル(デノシン)の点滴静注を予防的に投与することがあります。
シクロスポリンやプレドニンには、血圧を上昇させる副作用があるため、降圧剤を服薬することが多々あります。降圧剤には種類が多く、また何剤も飲まなければならないことが多いので正しく服薬することが大切です。
心臓移植では心房の縫合を行うため、術後に心房内部に血栓ができることがあります。これを予防するために、血栓形成を阻害する作用のあるペルジピン、パナルジン、又はアスピリンを服薬します。これらの薬は、慢性拒絶反応の進行を遅延させるという報告もあります。
プレドニンは胃酸分泌を増加させる副作用があるため、コランチルやガスターを服薬します。
その他、状況に応じて利尿剤、強心剤、高脂血症予防薬や鉄剤を服薬します。多くの解熱・鎮痛薬はシクロスポリンの腎毒性を増強させたり、胃潰瘍の原因になったりしますので、発熱時はフェナセチンかアセトアミノフェン製剤を服薬することになります。