腎または肝機能障害があると、免疫抑制剤であるシクロスポリン、イムランなどの使用によって悪化することがありますので、障害が強い時にはその回復を待ってから心臓移植を行います。心臓移植を行ってもこれらの機能の回復が見込まれないときには心臓移植はできません。
活動性の消化性潰瘍や重症糖尿病は、移植後の免疫抑制剤として服用するステロイドの使用によって悪化することが多いので、それらが鎮静化してから心臓移植を行います。
エイズ、結核、ウイルス性肝炎などの感染症、悪性腫瘍のある場合には心臓移植は行いません。
心不全が強くなると、左心房の圧が高くなって、肺高血圧になります。心不全の期間が短いと肺高血圧は移植直後に戻りますが、心不全の期間が長いとなかなか戻りません。心臓移植の際にドナーからいただく心臓は、心機能の良い心臓をいただくわけですが、ドナーになられる人)は肺高血圧がないので急に肺動脈圧が高くなると、移植された心臓は高い肺動脈圧に耐えられません。肺動脈圧を下げる薬剤が開発されて、心不全に陥ることは少なくなりましたが、心不全に陥った場合には、機械的補助人工心を一時的に装着したり、別の心臓を移植しなければならないことがあります。そのため、予めレシピエントの肺高血圧の程度を調べ、高い場合には心臓移植を受けていただけません。場合によっては、心臓と肺を同時に移植する心肺移植の適応となります。